Special

「“痛い目”ってどんなこと言ってんの?」



その声は私じゃなかった―――



「レン…」


暗がりだけど、間違いない。

私の目は、耳は、鼻は――――体の全てでレンがわかる。



「――レン?なんでここに……」


昔賑わってたであろう元ホストクラブのこのハコは、今は物凄く静かで指一本ソファに触れるだけで響くような気さえする。

そんな静寂でまるで時が止まったかのような空間を、ジャリ…ジャリ…と音を立てて介入してくる。


「レン!お前、何しに…っ」

「由麻から“渡したいもの”を受け取りにきたんだよ」

「えっ…」


一瞬マサキだけでなく、私も止まってしまった。


“渡したいもの”


その言葉に自分のカバンを見た。

ああ、バカだ私。
返さなければいけないものがふたつも残っていた。
未だに返しそびれているなんて―――。


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