Special
マサキ×レン
マサキに覆い被さられる体勢にも関わらず、レンが隣に歩み寄る空間は急に緊張感がなくなって―――
「つーか、まず、なんでここわかったんだよ?!オレもこいつのも携帯の電源は切ったはずだ!」
「いや…さすがに焦った。お前のことなんも知らねぇし。家は堂本さんが知ってたけどいないしな」
レンはまだゆっくりと歩き進め、あと数メートルで私とマサキの位置へ辿り着く。
「由麻から離れろよ!!」
そして急にレンの鋭い声が響き渡った。
レンが声を荒げた―――
それはレンが感情を露にした証拠で、同時に殻を破ったこととも言える。
今までただひたすらに殺してきた感情を。
「初めてだなぁ?そんな風にガンつけて、凄むなんて。あの時はまるで相手にもしなかったくせに」
「あの時?」
「まぁテメェには価値のない過去になってんだろうけど―――」
「あぁ、“ここ”で会った時か」
レンが少しも間を開けずにそう言うからマサキは心底驚いたようで、私を抑えていた手も緩み、目を見開いてレンだけを見ていた。
そして、その一瞬をついてマサキから逃れて私はレンの元へ駆け寄った。
だけど、マサキは私が逃げたことなど構わない様子でレンに言う。
「お……ぼえて…?」