Special
「8年前だろ?お前が俺に絡んできたのは」
知っている…覚えているのが当たり前だというようにレンは言った。
「う…そだ……だってお前!オレに見向きも…何も言わずに…!だから、オレは…!…人のモンとって、オレの存在を否定して―――」
「生憎お前のモノを盗った記憶なんかない」
マサキはきっと心の底では気付いていた…いや理解していたはず。
自分から奪われた事実と――でもそれはレンが奪った訳じゃないという事実を。
だけどそう思って、そうやって怒りの矛先を誰かに向けなければ立っていられなかった。
その感情だけが、唯一マサキを立たせてくれていたのだから。
「“見向きもしなかった”――――ね」
レンが自嘲気味にマサキの言葉を復唱した。
マサキもレンに視線を集中させる。
「そうじゃない―――あの時、まるで自分を見ているようで…だから見られなかった、目を背けた」