Special

動き出した時間



「退院っていつだろう」


一日経った今日は、昨夜の事件なんか夢だったんじゃないかと思う位に平和で天気のいい一日だった。

ボーっと学校の窓から外を眺めてそう呟いた。


「またボーっとしてる!」


背後からそう声を掛けてきたのはやっぱり茜。


「茜・・・」
「なに?うまくいってないの?」
「いや・・」


むしろ逆で。
それがなんだか嘘のようで、今が夢なんじゃないかと思ってしまう位だった。


私は学校の帰りに恐る恐る病院へ向かうと、昨夜別れたばかりの病室の前に立った。


大丈夫。
もう拒絶はされないはず。


手にはレンが預けると言った合い鍵が銀色に光っている。


コンコンコン。


「――――レン・・・?」


私は静かに扉を開けた。


「レ・・・ン」



だけどそこは綺麗にベッドメイクされていて誰の姿も見えなかった。


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