Special

全力疾走というやつを、数年振りにした。


「ど、うもとさんッ…」


息を切らしながら名を呼ぶと、その相手が私の位置まで階段を昇ってきた。


「大丈夫か?」
「あ…は、はい」


再び咥えた煙草を赤くさせると、目の前に来た黒い車に歩み寄り、振り向いて一言いう。


「乗れ」


そう促されて私はまた、あの黒い車の後部座席へと乗り込んだ。


「私がくるの…わかってたんですね」
「…由麻の行動わかりやすいからな」


私がくるってわかってたってことは、堂本さんは何かを知ってるんだ――――レンがいない理由を。

ゆっくりと煙草を押し消すと、堂本さんが可笑しそうに言った。


「由麻はレンの家の鍵あるんだろ?行ったか?」
「あ・・・」


そんなこと頭になかった。
確かに合鍵は未だに私が預かってる。

だけど……


「いえ…勝手に入るのは…」

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