Special

未だ閉じている瞼の奥に、鮮明に浮かぶもの。


それは、ここにいた頃の自分でもない。


母でもない。

町でも思い出でもない。



――――アイツ。


たった一人。



アイツの存在が、俺を今ここに立たせている。



ゆっくりと目を開けた。

そこにはやはり変わらない、風景。
引き返そうと踵を返した時だった。


「―――――祐真」


“ゆうま”


その名を口にする存在は一人だけ。



“母”だった人―――
< 156 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop