Special
未だ閉じている瞼の奥に、鮮明に浮かぶもの。
それは、ここにいた頃の自分でもない。
母でもない。
町でも思い出でもない。
――――アイツ。
たった一人。
アイツの存在が、俺を今ここに立たせている。
ゆっくりと目を開けた。
そこにはやはり変わらない、風景。
引き返そうと踵を返した時だった。
「―――――祐真」
“ゆうま”
その名を口にする存在は一人だけ。
“母”だった人―――
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