Special
「今後、門限は18時。ここで二人きりにならないこと。勿論、由麻を君のとこに連れ込むなんて言語道断だ」
「お父さん…!」
「今から5分だけ、特別にこの部屋に入ることを許可してやる」
つらつらと言葉を並べて、お父さんはレンを横切り部屋を出た。
「……レン」
「“祐真”」
「え?」
「俺の本当の名前」
「ゆ、うま―――…」
その名をいざ口にすると、なんだか異様に照れ臭い。
目の前にいるのは間違いなくレンなのに、まるで生まれ変わったあと再会したような、例えようもない気持ち――――
「由麻と似てる名前だろ」
「…うん」
「だから、本当は初めて由麻の名前を聞いたときは変な感じした」
それはその筈―――
祐真という名を捨てて生きてはきたものの、縛り付けられたままでもある過去の名なのだから。