Special
「由麻が先生、ね」
「あ、まだ言う」
「いや。本当はすげぇ似合うと思ってる・・・俺を更生させたのも由麻だし」
「更生って」
私は笑いながら思った。
昔の―――レンだった時の祐真と、そして一緒にいたマサキのことを。
2人は学校や先生が問題だったわけじゃない。
ーー家庭に問題を抱えていただけ。
それでも今、自分が子供と身近な存在の“教師”なら、似たような生徒がいれば何か気付いてあげられるんじゃないか、と。
私の根底にはそんなこともあるのだ。
「ああ、着いたな」
祐真とは相変わらず別々に暮らしている。
それはあの日から、お父さんとの約束だったから。
「ありがとう」
私は持ってくれていた鞄を受け取ってそう答える。
「じゃあな…」
「祐真」
祐真が玄関先で踵を返した時に名前を呼んだ。
「……あれから、堂本さんやマサキに会ったりしてないの?」
あの日から、すっぱりと夜の世界から身を引いた祐真。
しばらくはマンションのこととか堂本さんとは会ったりしていたみたいだけど、もともとお金も無駄遣いなんかしてない祐真は金銭面で困ることもなくて、それも数カ月もしないうちに落ち着いていて。
以来、会話にも上らなかったのだが私はたまに思い出しては気にしていた。
でも、こうして祐真に直接聞くのは初めてだった。