Special
「ごめんなさい…思い出させるようなことを……忘れて!おやすみ―――」
「この前会ったんだ」
慌てて会話を終わらせようとした時に祐真が被せる様にしてそう言った。
「…え?」
「偶然に、だけど。マサキに」
私がその名前に目を見開くと、祐真は続けた。
「お互いに…見て見ぬふり出来ないくらい正面からばったりだったから……アイツ、なんかどこだかの店の厨房にいるみたいだった」
「あ…やっぱりマサキも―――」
辞めてたんだ・・・ホスト。
「なんか女連れだった。けど、あれはちゃんと―――特別な人だと思う」
「・・・」
「・・・ほんと。なんであれから数年経ってるっつーのに・・・偶然にも程がある」
偶然…?
きっと偶然なんかじゃなくって、やっぱり祐真とマサキはなにか繋がってるものがある気がする。
「堂本さんは――…あれから会ってない」
久々に祐真の口からその名を聞いた。
そしてその内容は私にとって不思議なことだった。
二人は親子以上の関係を築いてきていたのに、あれだけ堂本さんは“レン”を気に掛けていたのに。こんなにもあっさりと連絡を途絶えさせるなんて信じられない。
そう思うのが自然だった。
だって誰よりも、“レン”を想っていた父のような、兄のようなそんな存在であったのは私にもわかることだから。