Special
「ああー…ま、そんなようなもんか」
おれは小さく笑ってそう答えると、手を伸ばせばすぐに届くホストファイルをぱらぱらと捲った。
それをパタン、と閉じておれは店を出ようと出口に向かう。
「おい?今からどこいくっつんだよ。今朝はお前からみんなに話しねぇと…」
「煙草切らしたから。すぐ戻る」
遠藤の溜め息を背に、おれは黒い大きな扉を押しあけて階段を昇った。
階段を昇りきると外はまだ明るくて、営業してる店も殆どない。
イコール人通りもない。
そんな繁華街をおれはひとりふらっと歩いた。
少し歩くと“一般的”な街とぶつかる。
そこは今来た道とは違ってそれなりに人が溢れていた。
コンビニいくか…
相変わらずふらふらと歩くおれを通行人がちらちらと見ては通り過ぎていく。
まぁ、スーツはスーツでもちょっと普通のサラリーマンとは違う雰囲気は隠せないからな。
そんなのはしょっちゅうで別に気にも留めずにおれは歩道を渡ろうとしたその時に背中から聞こえてきたのは誰かの声。
「あのっ……!」