Special
目の前にいる女を忘れることはない。
「――――由麻」
おれがその名を口にすると、ちょっと大人になったそいつは昔と変わらない笑顔で言う。
「覚えててくれてたんですね」
―――忘れるわけないだろ。
お前は、おれの弟―――みたいなやつの大事な女なんだから。
「お店、近くだしもしかしたらって…お元気ですか?」
「ああ。見ての通り。レン…いや、あいつは?」
“レン”と呼ぶおれを由麻は笑った。
「“レン”も元気です。この間内定決まってました」
そういう由麻の左手には指輪がはめられていた。
おれの視線がそこから動かずに黙っていると、由麻が何かを躊躇いながら口にした。
「…あの」
「ん?」
「私…ずっと謝りたくて…」
「なんで」
久しぶりの再会で、何を謝りたいっつーんだ。
おれには全く見当がつかないまま、コンビニ前で由麻に聞き返した。