Special


「っ…痛ッ」


やっぱり無理しなければよかった。
いつもの電車は出ちゃうし、座り込んだ為にスカートも汚れたし…

左足の踵をみると酷い靴擦れ。
今日に限って絆創膏も何も持っていない。


「はぁ····」
「見せて」


その声に顔を上げると目の前には見知らぬ男の人。


「立てない位痛いんだろ?じっとしてろ」
「え···?」


私はただ黙ってその彼に従うだけだった。

自分の片膝を付き、私の左足を丁寧に扱う手は長く綺麗な指をした手。

指にはいくつか指輪がはめられていて、視線の高さには首から垂れ下がっているネックレス。指輪はそれと同じブランドなんだろうか、なんて思ったりする。

朝陽に煌めく茶色の髪は、屈んでる彼の目元を丁度隠すように靡いて顔が見えない。



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