Special

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」


息を切らしながらレンの目の前に立つ。


「…まさか、由麻の番号必要になるとは思わなかったけどな」


そう言って耳元に充てていた携帯を下ろしてポケットに入れたレンは代わりに何かポケットから出して私に差し出した。


「え…?」
「昨日店で忘れてってた」
「あ…うそ…」


受け取ったそれは入店時に提示した自分の学生証。


「あ、ありがとう!」
「··仕方なく。お前俺を指名するから俺が担当になってるし」
「担当···?」
「まぁ、もういいや。じゃ」


そういって背中を向けたレンに、言葉よりも先に体が動いていた。



「い、行かないでッ」




掴んだ手ですら自分の鼓動を感じるようで―――





―――神様。この幸運、もう少しだけ、良いですか?



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