Special

この人―――!!

あんなに前から私のこと見てたんだ。
ずっと張り付いてただなんて・・・!


目を見開いて私は男を見た。
そして、得体の知れない人間に話すことはない。と、ひたすら黙秘する私に男が動いた。

ポケットからすっと右手を抜くと私の顎に手を掛けて、クイッとレンよりも少し高い長身のその男に視線が合うように顔をあげられた。


「何も言わないの?だったら無理矢理、口開けちゃうよ?」


妖艶な笑みと共に、唇に男の指が触れる。


ゾワッと全身が一瞬で冷えた。
私は怖くなってとりあえず口を開いた。


「ぐっ、偶然会っただけ…です」
「偶然?」
「名刺、頂いて…それだけです」


それは本当で嘘なんかんじゃない。

だから、その証拠と言わんばかりに震える手をやっと動かしさっき堂本さんから貰った名刺を男に見せた。


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