Special
「・・・おい、飯食ったのか?」
「あ、うん。朝にミルクあげたよ」
「違う。由麻が」
「えっ」
ついこの間似たような会話を逆の立場でした気がする。
よく考えてみると、自分の格好は昨日の服装のまま。
ワンルームのキッチンやテーブルには何かを食べた形跡もない。
そんな状況だもん。
レンなら私の異変に簡単に気付いてしまうよね。
私はなんだかこんな暗い気持ちの時にそんなことを気遣いして貰えただけで嬉しくなって少し救われた気がした。
でも、これ以上はダメ。
気付かれちゃ、ダメ―――。
「大丈夫だよ」
それは極上の笑顔とゆったりとした声で答えた筈だった。
なのに――
「・・・お前、嘘下手だな」
そう一言だけ置いて、レンは玄関から去って行ってしまった。