Special
俺はチビを入れたハウスを手に、自分のマンションへと歩いていた。
どうしても引っかかる。
由麻の笑顔、声、言葉。
あんなに心から笑ったり、感情表現が豊かな女だったはずなのに。
なにか…あったんじゃないか。
なにかってなにかはわからないが。
「クゥ~ン」
ハウスの中でチビが鳴く。
「お前、由麻と会えなくて淋しいか…?」
ついこの間まではなんの繋がりもなかった女。
だったらまたその時に戻ればいい。会う前の、時間に。
オートロックを解除し、エレベーターに足早に乗り込む。
部屋に着くと、チビを出してあげてすり寄ってくる体を抱き上げて大事に撫でてやる。
「お前、今夜新しい家族んとこに連れてってやるからな。いい人だから、大丈夫だ」
そうチビに向かって言う俺もまた、寂しい気持ちでそう伝えていた。