Special
お金は・・・一応多めに持った。
学生証も―――ある。
あとは…
レンに返し忘れていた合鍵と、新品のハンカチ。
鞄の中身を頭の中でチェックして、私はまた夜の街の中にいた。
階段を一段一段ゆっくりと降りる。
表の看板は見ないように下を向いていた。
でも考えたらそんなことしたってこれから実物に会うのに。
2度目の黒い扉。
前回とはまた違う緊張の中私はその重い扉を開いた。
「いらっしゃいませ」
「あ、はい…」
「再来の方ですね、ありがとうございます。どうぞこちらへ」
マサキもそうだけど、ここの人…っていうかこの業界の人?本当に人の顔を覚えているんだなということに圧巻する。
私なんて本当に目立たないただの学生なのに。
偶然にも前と同じ席に通されて、その黒服の人が私に膝まづいて話しかけてくる。
「前回からレンになっていますが、本日もレンでよろしいですか」
そういえば前なんかの時にレンが“担当”とか言っていたけどそのことかな。
え?じゃあここでマサキとか言ってもいいものなの?
仕組みがわからない…