Special
「お客様、送りは?」
会計の店員にそう聞かれたけど『結構です』と1万円だけ出して足早に店を出た。
―――マサキは、追いかけてはこない。
階段を駆け上がる。
失敗した。
こんな場違いな世界に足を踏み入れたから。
―――でも、後悔は・・・してない。
それでも、どんな世界にいる人でも、レンの傍にいたかったと思うのは嘘じゃないから。
「っはぁ…」
後ろの息に思わず振り向いた。
マサキかも知れないのに。
でもレンかもしれない。
そう思って。
そして振り向いた先に目に入ってきたその人に私はどうしようもなく胸が苦しくなる。
「・・・なんで」
「それは俺のセリフだ」