Special

=8年前=




「堂本っ」


ある男に呼ばれて振り返るのは、長い髪をひとつに束ねて煙草を咥えたスーツ姿のおれ。


「お前本当に辞めんのか?!」
「別に今日すぐって話じゃねぇって!アホ」


この頃おれは今と同じ街のホスト業界では名が知れてるちょっとした有名人だった。


「お前辞めたらつまんねーよ」


そして目の前の男はおれの友人でもありライバルでもある男。


「遠藤は、おれに構わずそのままトップ3の中に居りゃいいだろ」
「ただトップになったってつまんないんだよ、もう」
「どんだけおれのこと好きよ?」
「死ね」


この時のホスト業界では珍しい方かもしれない。
こんなに腹割って話せる奴は。

おれ達は必要以上に干渉しない。
順位が変動したとしても、お互いに悔しい思いをする位で嫌いになったりもしない。


でも、本来男ってこういうもんじゃねぇ?っておれは思う。

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