その想いが届くまで-先生-
第一章

卒業



「卒業おめでとうございます!雪奈先輩ー!」

そう言って、後輩たちが泣きながら抱きついてきた。

中学校で陸上部の部長だった私は、後輩たちから何かと信頼されていたらしい。

そのため、仲の良い後輩が多かった。




「ありがとう。私が卒業しても…皆なら頑張っていけるよね?いつでも応援してるから。ね?」

私がそう言うと、後輩たちは抱きついたまま頭だけを私に向け、『せんばあぁぁぁい!!!』と号泣しながら、今度は倍の力でギュッと締め付けられた。





────私はこの春、中学校を卒業した。

長かったようで、やっぱり短かった。

皆で協力し合って作り上げた、文化祭。

気合の入りすぎた応援で、盛り上がった体育祭。


でも、やっぱり一番思い出に残ったのが、陸上部の仲間と過ごした日々だった。




朝練も、もちろんあった。

キツイ練習が、毎日続いた日もあった。

けど、汗水流しながら、皆と一緒に走ることが、とっても楽しかった。



陸上…バカっていうのかなぁ。

部活の休みの日があって、クラスの友達に遊びに誘われても、『ごめん、今日は走りたい気分なんだ』って言って、いっつも断っていた。


だから、部活の友達以外、そんなに仲の良い人はいなかった…。




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