戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?―特別編―


「さてと。では自宅の電話番号を秘書に手配させるので、即変えましょう。
あとは暫く警備も手配しますが、2人の安全のためだと思って許して下さい」

「ええ?大げさでしょう。彼女の番号くらい着拒にすれば」

「女性の執念は知っているでしょう?」

「あー、……うん。納得した」

会社員をしていた彼女だから、女性社会の苦労は重々承知している。そこを突くのは忍びないが、今回は仕方ないだろう。


「これからは、もっとすぐに俺に知らせて下さい。
大切な2人に出て行くと言われて、本当にパニックになりました」


――本当は俺が四六時中、2人とともに過ごしたいところだが立場上出来かねる。

「そうは見えなかったけれど、うん……そうする。でも、浮気は」

「浮気なんかする暇もないくらい、頭の中は貴方たちのことで一杯ですよ。
俺に初めて出来た大切な妻と息子で、何より大事な家族なんですから」

「……彗星」


「この幸せを逃す意味が分かりません」

ふわり、と顔を綻ばせた怜葉に俺も笑う。――誰がこんなにも愛しい人を手放すものかと。


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