戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?―特別編―
さらに怜葉が絶縁状態だった父君とは、氷山の一角が解けてきているといったところ。それは孫にあたる、星矢の存在が大きい。
ちなみに俺の実家は色々と相容れないものの、ここでも孫効果が奏功している。
ただ星矢を既に次の後継者と捉えている仕事人間の父が、この先変わることはないだろう。
「とりあえずご飯食べてから、俺も行くから準備しよう。
その前に電話だけしてくるから、星矢を頼める?」
「うん、分かった」
今もぐっすり眠る息子は怜葉の元から、リビングに設置してあるベビーベッドへと移った。
パタパタと忙しくキッチンへ向かう彼女を見届けると、静かに向かった書斎でスマホを手にした。
「ああ俺だ。至急……」
今回の一件で報いを受けるのは、本人ではなく親だ。
そうして芋蔓式に、大切な妻を傷つけた娘へとすぐに行き渡る。打算的で何が悪い?
悪いが、この件はビジネス以上に容赦はしない。
“そうならないよう”に防御線を張ってきたのを無視したのは、他ならぬ先方のお嬢さんだ。