はなかざり
俺が走っている間も、絵里と賢二は後ろで喧嘩していた。
賢二はからかっているだけ、かもしれないけど。
仲いいなあ、と素直に思う。
そうしているうちに学校に着く。
まだ門は閉まっていないことに少し安堵。
俺はまだ喧嘩している2人の方に振り返る。

「おい、急ぐぞ」
「はーい」

絵里は途端にパッと表情を明るくさせて、俺の左横まで来る。
すると賢二は右横に。

「亮介の横に来ないでよっ」
「絵里ちゃんがどけば俺もどくよ?」
「あたしは絶対どかないからねっ!!」
「ああもういいから。ホラ、マジ遅刻すんぞ?」

俺が促せば、2人はすぐに嬉しそうに応じる。
俺はそれに少し笑った。




靴箱に入れば、何人かクラスメイトがいた。

「おはよー亮介、絵里」
「おう」
「おっはよー」

絵里が、挨拶してきた奴に笑顔を向ける。
それに、俺は胸の辺りがチリッとした。
―――でも、俺自身それに気付かないフリ。
気付いちゃいけないことくらい、分かってる。

「よお、似てない双子」
「うるせえ、二卵性だ」

そう、俺と絵里は二卵性の双子。


―――という、設定。


世間的には、の話。

「じゃあな、絵里」
「うん、昼休みにねー」

絵里は笑顔で言った後、俺と同じクラスの賢二をギロリと睨んでから教室へと入って行った。
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