嘘2
突然
「本当に別れたいの?」
久美の話しかけた声はもう祐也には、届いていなかった。
ソワソワした態度が落ち着きのなさを示している。
居た堪れない気持ちの久美は五歳の真希の腕を掴み立ち上がった。
心が押しつぶされそうで痛い。
「どうしたの?ママ」
つぶらな瞳が久美の顔をじっと見つめている。
「パパと今日でお別れだからさようならって言って」
「さようなら」
悲しそうな真希の瞳は涙で濡れていたが、
この時の祐也には何も見えなかった。
喫茶店の外で待たせている浮気相手の由奈のことで頭が
いっぱいだった。