最後の恋なら
バタン
と扉が閉まる
「……尚志」
静かな事務所で
茉愛菜さんの声が響いた
「どうしたんですか?」
茉愛菜さんの呼ぶ声に応える
茉愛菜さんは視線を下に向けて
少しだけ震えた声で言った
「ここ出るのに
なんの覚悟も無しに出るわけじゃないよね?」
茉愛菜さんの遠い眼差しを見た俺は
その意味深な言葉を理解して続けた
「改めてわかったんですけど
俺は迷うことはなかったです」
「そだよね」
俺の言葉に顔を下に向けた茉愛菜さん
しかし
「じゃあ私もこれを言うのは最後にする」
まっすぐ俺の目を見た茉愛菜さん
俺は逸らすことなく茉愛菜さんの真剣な目を見つめた
そして茉愛菜さんが言う
「私は尚志のこと好きだから」