最後の恋なら
「この調子だと覚えてないみたいだね」
「………え?」
茉愛菜さんは作業用の帽子を取って
もう一つの椅子に座る
「結構、前に会ってるよ
私たち」
「………えぇ!?」
やべぇ
全っ然!覚えてねぇ…
「ごめんなさい!全然覚えてないです!」
「いいのいいの
昔の話だからさ、無理もない」
茉愛菜さんは若干呆れた顔をして首を横に振る
まずいぞ…
これは失礼だ…
「あの…昔の話を…教えてくれませんか?」
「……やだね!」
茉愛菜さんが表情を変えて意地悪そうな顔を見せる
俺はその姿に肩をがくりと落とす
「なんでですか!
教えてくださいよ!」
「絶対に教えない!
私、まだ仕事中だからあんたは休憩ね。
んじゃ、」
茉愛菜さんは帽子を被って事務室を出る
ぽっかり胸に大きな穴が開きました!
くわー!覚えてない!
ちょっと心残りがあるが
なんとか思い出そうと事務室で頑張る俺であった…