rainbow
その日は、放課後になっても雨が止むことはなかった。
憂鬱な雨の帰り道。
桜の花びらが地面に潰されていた。
朱奈は、綾芽達と吹奏楽部を見学に行った。
私は1人、花びらを無くした桜の木を見上げながら歩いていた。
「…松川菜々さん?」
背後から、急に声をかけられて振り向く。
「やっぱり!俺のこと…覚えてないかな?」
困ったように眉を下げる彼は、何故か歩の香がした。
「えっと…」
必死で過去の記憶を探るが、彼の顔は出てこない。
「…まぁ、分からんくて当然か…」
彼はそう言って苦笑いすると、眉間にシワをよせて、
「歩の…サッカーのチームメイトやったんだけど…」
と、少し言いにくそうに言った。
「あ…」
ここにも、歩のカケラがあった…