rainbow
「……」
何も答えられずに俯く。
別に、心配してほしいわけでも、気を使ってほしいわけでもない。
なのに、大丈夫と答えることも出来なくて…
気付いたらまた、涙があふれてた。
「歩と菜々ちゃんってさ、俺の憧れだったんだ。」
ゆっくりと歩きながら、彼は話しはじめる。
「試合のとき、いつも菜々ちゃんが応援来てただろ?
遠くで見てるだけだったけど…あいつ、いつも菜々ちゃんのこと、すっげー愛しそうに見ててさ、みんな羨ましがってた。
ほんとに、幸せなカップルなんだなって…」
歩の笑顔が、あのユニフォーム姿が、また脳裏に浮かぶ。
「だから俺、あいつの葬式のときの光景が、ほんとに信じられなくて…
あの日の菜々ちゃんの姿が、頭から離れなかった」
…歩のお葬式。
覚悟はしてるつもりだったのに、冷たくなってしまった歩を受け入れられなくて、泣き叫んだ。
一生分の涙を流しきるように…