rainbow
入学式が終わった後の静まりかえった校舎。
左胸に咲く、ピンクの紙の花。
私は1人、校舎を歩いた。
「あ、ここ…」
一階の中庭。
去年の夏のオープンキャンパスで、私と歩が1番気に入った場所。
『来年には、ここで2人で弁当食べたいな。』
そう笑った彼の笑顔を、今でも覚えてる。
新しい場所に来ても、君の欠片はどこにでもある。
「歩っー…」
私の頬を涙が伝う。
やっぱこんな学校、来なきゃよかった。
歩が居なきゃ、ここにいる意味ないよ…
そう思ったとき、少し暖かくなった春の風が、桜の花びらと共に私の頬を撫でた。
「泣くなばか。」
そんな声が聞こえた気がした。