森に潜む何か
1
森に女が来た。
若かった。美しかった。
腕に何かを抱えていた。
それが何かはわからなかった。
女は森の奥へと歩いて行った。
ばれないようにあとを付けた。

大きな木の前で立ち止まった。
泣いているようだった。
ごめんね、ごめんねと繰り返していた。
抱えていた何かを木の下に置いた。
女は涙を拭いながらその場を走り去った。

その時泣き声が聞こえた。
女とは別のものだった。
木の下からだった。
近づいてみた。
赤ん坊だった。
白い布に覆われていた。
しわくちゃな顔で泣いていた。

それを抱えて女を追った。
すぐに追いついた。
女は怯えているようだった。
何かの気配を感じとったらしかった。
殺さねばならなかった。
辺りを見回す女を気付かれないように背後から襲った。

首が飛んだ。
切り落とされた部分から血が噴き出した。
しばらくぴくぴくと痙攣していた。
やがて静かに動かなくなった。

赤ん坊を見た。
笑っていた。
返り血を浴びて赤く染まって笑っていた。
持って帰ることにした。

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