5つの扉



静まった教室には暗い空気だけが残る。

まだまだ残暑が厳しいので強めに冷房がかかる保健室が、妙に寒く思えた。



「このことだったんですか?」

「ええまぁ……この年頃って難しいですよね、色々と」


「……彼女は桜庭先生がそういう言葉も嫌なのかもしれない」

「え?」

“そういう言葉”……?


「あの年頃は、とかなんか子供扱いしてませんか?もう東雲さんも高校生なんですよ……だから誰かに好意を抱いたりだってする」


一応分かってはいる。
でも年上の男性に惹かれてしまうのは一過性のような気がしていた。



「対等じゃないとか 下に見られているとかって結構人は敏感に感じるんですよね」

七瀬先生は、特に好きな人からどう思われているか気にするでしょう? と付け足した。


「東雲のことはどうしたらいいんですかね……こういうの教師になってから初めてで」


「気がある素振りを見せちゃダメですよ。後、さっきみたいに誰か他の人と付き合ってるって思わせるのもいいのかも……そうしたら自然と諦めがついたりしますから」

……なるほど。さすが女性だ。



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