後ろ姿に恋してる



「……あたしだって好きだよ」

ふてくされた子供の様に、あたしは呟いた。


「…自分だけが好きですみたいな言い方嫌い」

「ごめん、ごめん。ハル、手だしな?」

「…こう?」

器型のように差し出した手に小さな子猫が乗せられた。



「暫く見てやって、ハルに懐いてるから」

ごろごろと喉を鳴らし擦りよってくる子猫に綻んだ顔は、きっとだらしないと思う。
それでも、手に乗った暖かさは心地よくて、



「……ふふっ…」

思わず笑ってしまうんだ。

まるで貴亮の側に居るような気がして。



< 29 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop