後ろ姿に恋してる


伸ばした手は虚しく空ぶってカップはシンクから落ちていく。



「………」

陶器の割れる音が部屋に響きわたり、カップの破片は散らばって、濃い茶色のコーヒーが床を茶色く染め上げた。



「…まだ使えたのに。……っ…!!」

カップの破片を拾い集めていると、指にピリッとした痛みが走った。
指先からはじんわりと浮かび上がる赤。

口に含めば鉄の味が広がって、顔をしかめた。



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