tears
-漣-
・5月
高校生になって変わったこと。
世界の広さを少しだけ知った。
「みーくん…よう受かったな」
「髪の毛の色違うて誰やらわからなんだわ」
同じ中学出身の藤原道明の姿を見つけた和祢はジュースの紙パックを持っていた手を振る。
和祢は憎めない奴なのだ。
「なあレン」
和祢と同じように道明に手を振ってみると、道明は笑顔でさらに大きく手を振った。道明のまわりにいた奴らは振り返って和祢と漣のいる校舎を見上げた。
道明に関しては昔からだが、その道明でさえも最近は霞んで見える。
高校とはすごい場所なのだ。
"すごい"という自分の語彙の少なさに漣は唇を尖らせた。
「なんぞ?」
大人しい人間はキレると怖いとは言うが、和祢は穏やかではあるが大人しいわけではない。しかしキレると怖い。
静かに怒る人間が一番怖いのだと、和祢を見ている漣は知っていた。