いけにえ系男子【BL】
何処かの窓が割れる音がした。
出入り口のシャッターは、叩かれまくって内側にボコボコ変形している。
……あー、もうヤバいって!
俺らボコされて彼女さんが連れて行かれる。
そんな想像しか出来なくなった時、電話の向こうの総長が出した結論は。
『お前、アイツのふりしてろ』
「……いや、無理っす」
確かに、彼女さんは背が高い。
やたら背の高い人が集まるここでは周りよりちょっと低目かなーな俺とは身長が同じ位だ。
だからと言って、誤魔化せる訳がないだろ?!
彼女さんは女で、俺は男だ。
無茶すぎる。
さすがにバレルだろ。
『大丈夫だ、奴らはアイツの事をまったくと言っていい程知らないはずだ』
今まで必死に守ってきたから、遠目で見られたぐらいしか無いらしい。
大した情報も無いのに彼女さんを狙ってこれてるのは、うちのチームに出入りする女は他にいないからだろう。
「いやいや、でも、」
無理っすよ。と繰り返そうとした俺に、それに、と総長は続けた。
『俺が必ず助けに行く』
決意の籠められた熱い声。
こんな声で彼女さんにいつも甘い言葉を囁いているんだろうか。
ヤバいな。
「わかりました!任せてください!」
思わず俺は了承していた。