いけにえ系男子【BL】
彼女さんの着ていた、総長のパーカーを借りた。
かなりダブついているから、体の線はまったく出ない。
そして同じく大きいフードを被れば顔も見えない。
少し出る髪の毛は、長さも色も彼女さんと同じ位だ。
襟足の長いショートで、総長も少し短いけれど同じ。
2人はお揃いにしている。
そして彼に憧れている奴らは一様に真似をしているから、チーム内の半数程がこの髪型だ。
どちらかと言えば総長の方に皆近くて、長さも同じなのは俺位だけれど、彼女さんも紛れやすいだろう。
元々彼女さんはカジュアルな格好を好む人だから助かった。
変装と言えるかどうか怪しい程の着替えが済んだ頃、バタバタと煩い足音と怒声が聞こえた。
どこからか雪崩れ込んできた奴らに向かって、俺は一歩近づく。
他のメンバーには少し下がっていてもらう。
すると相手の視線は全て俺へと向けられた。
「お前か?」
入ってきた中の1人、恐らくその中ではリーダー格であろう、何度か見た覚えのある真っ黄色の頭をした男が聞いてきた。
俺は遅い動きで頷く。
喋らない事で不審に思われるかと思ったが、勝手に震える体のお蔭で誤魔化せているようだ。
されるがままに俺は彼に手を引かれ、外へと連れ出される。
「震えちゃって、かっわいーねー」
揶揄するように笑う男の声が聞こえる。
何とでも言ってくれ。
本物は絶対こんなんじゃないけどな!
震える事も怯える事も無く、むしろ今でも俺と代わろうとこちらへ来ようとするのを押さえられているかもしれない。
そんな事を考えていると、ちょっとだけ笑えてくる。
……俺はどんだけ弱いんだって。