いけにえ系男子【BL】
グイッと顎を持ち上げられ、強制的に視線が合う。
涙の溜まった目じりに触れながら、驚いたように目を見開き、相手は呟く。
「お前……女、なのか……?」
んな訳ねぇだろ!見えるんだったらお前の目は腐っている!
眼科行け!と心の中だけで叫びながら、口から出てきた声は掠れていた。
「……そう、です」
……保身に走ってみたけど無理がある!
俺の顔はどう頑張っても女には見えない!
ついでに声も男だ。変声期はとっくに迎えた後。やっぱ無茶。
掠れっぷりが余計に拍車をかけて無理。
「そう、か……」
相手の顔はとても複雑そうだ。
あまりにも俺がかわいそうで、紳士としては騙されたふりを続けなければならないのだろうか。
それはごめんなさい。でも俺だって困ってるんです。
「……どう、します?」
黄色頭もまた、戸惑った声だ。
俺の扱いに困っているというよりは、敵総長の反応を窺いまくっているように思える。
「女なら、問題は……無い?」
「いや、でもこの子は向こうのチームの……」
なんだかよく解らない会話を、2人は続けている。
そして隣から、ひっ、ふっというような変な息遣いが聞こえてきた。
気になって見上げてみると、相手も俺を見ていたらしく目があってしまった。
何と表現したらいいのか解らない色の頭をした彼は、「無理!」と叫んだ。
そして辺りに響く笑い声。