舞蝶-華虎*守りたいもの*
私は転校先のこの不良校に今まさに踏み出そうとしている。
いや、踏み出すか迷っている。
なんかレベルが違うんだよね。
不良ってより暴走族の寄せ集めみたいな感じ。
校舎の所々がスプレーで落書きされていてなんか悲しい。
ここでは違う意味で浮く気がする。
私はそれなりの覚悟を決め、一歩足を踏み出した。
私が真っ先に向かったのは理事長室。
知り合いのおじさんがやってる。っていうのが流行ってるらしいけど、私はここの理事長さんと初めて会う。
コンコン
軽くノックする。
ガチャリ
ドアをゆっくりと開ける。
「失礼します。佐藤遥です」
中には優しそうなおじさんが一人。
この人が理事長?
今どきってよくわからない。
「あー。初めまして理事長の川瀬です」
なんかユルい。
もっと畏まって話すもんじゃないの?
あー。なんて言っちゃってるよ。
さすが不良校だわ。
「では私はこれで」
「うん。それがいいよ。たぶん担任もこの向こうにいると思うし」
ドアを指さしながら川瀬さんは優しく微笑む。
ギャップがヤバい。
お願いだから黙ってて。
喋らなければ素晴らしいのに……。
理事長室を出て周りを見渡すと本当に担任らしき人がいた。
「あなたが私の担任ですか?」
「そうですよ。渡辺と言います」
この人礼儀正しい!!
不良相手に素晴らしすぎる。
あっ、もしかしたら私が真面目ちゃんっぽいからかもしれない。
黒髪ロングの髪型と限りなくナチュラルなメイク。
これはクラスの反応も楽しみだ。