まっすぐなキミにまっすぐな愛を。
「き、稀衣夜くん…。」
見つめ合ったまま動けなかった。
何かを言える、雰囲気じゃなくて。
トイレのドアに手をかけたまま沈黙が続いた。
どれくらいだったのかな…
多分、数十秒だけど。
あたしには何時間にも感じた。
先に動いたのは稀衣夜くんだった。
いきなり後ろを向いたかと思うと、かなりの大きさの声で叫んだ。
「お袋…っ!」
かなり、怒りがこもった声。
でも葉子さんの反応は無かった。
「チッ…なぎちゃん、来てくれる?」
またこちらを向いて訊ねた稀衣夜くん。
さっきみたいな恐さは無かった。
またあの和室に…ってこと?
どうしよう、すごい怖い、けど。
このままでいれるわけもないから、小さく頷いた。