まっすぐなキミにまっすぐな愛を。
「ねぇ、先輩。今日ちょっと行きたいところがあるんだ…」
「…どこだ?」
そう聞いて顔を見ると、久しく見た哀しそうな、しかし決然とした表情で。
「…あたしの、前のお家。」
風が吹いて彼女の前髪がふわりとゆれた。
同時に、手が震えているのもわかった。
「………そうか、わかった。場所は?」
「あたしが案内するよ。」
行く道で、ポツリポツリと話してくれた。
「あたしね…お父さんがお父さんじゃないってことばかり考えてたけど…」
「あぁ。」
「そしたら…別にお父さんがいるってことで。」
「うん。」
「……誰だか、知りたい。会ってみたい…。」
そう思うのは当然のことだと、思う。
その現実にきちんと目を向けられたなぎさの強さに驚いて
無力な自分が情けなかった。
なぎさは…
俺より年下で、女の子で。
なのに、こんなに俺より大人だった。