『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
それからというもの、今まで以上に楢崎くんが気になって仕方がない。
あの先輩が現れて、自分の気持ちがあらわになってしまった。
楢崎くんのことが好きだってこと。
あの先輩に、嫉妬心を抱いていること。
そんなわたしの気持ちなどまったく知らないで、彼はいつもどおり真面目に静かに授業を受けている。
時折、黒縁眼鏡を中指で押し上げながら。
授業中にも関わらず、彼のその仕草を凝視していたら、さすがに視線を感じたのか、彼がわたしの方にちらりと顔を向けた。
目が合ってしまった。
わたしは思わず目をそらせて、まったく聞いていなかった授業のノートをとるフリをした。
ああ。
心臓が止まるかと思った。
大きく深呼吸をした。