『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
翌日。
わたしはいつもどおり、彼の隣りに座っていた。
彼もまたいつもどおり、中指で黒縁眼鏡を押し上げながら黙々とノートをとっている。
何も変わらない風景。
だけど、彼との距離は明らかに遠くなった気がした。
大人に見える。
わたしは、取り残された。
彼はきっと、わたしのずっと前を歩いている。
そんな気がする。
何ら変わらない1日を終えて、教室を出ようとした時だった。
「ちょっと」
その声に、体がびくんとした。
振り返ると楢崎くんがこちらを見ている。
わたしが呆然と立ち尽くしていると、彼はもう一度、
「ちょっと」
と言って、自分について来るよう促した。