『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
何が起こったのかわからないまま、わたしは大きな彼の後ろをついていった。
人気の少ない渡り廊下まで来ると、彼は立ち止まりわたしの方を振り返った。
「これ」
彼は、茶封筒をわたしに差し出した。
「へ?」
まぬけな声を出してしまった。
「どうぞ」
長い腕をぴんと伸ばして、さらに差し出すので、わたしはとりあえず受け取った。
すると、
「じゃあ」
と言い残し、彼は去って行った。
わたしはわけがわからないまま、その場で彼の背中を見送った。
そして、受け取ってしまったその茶封筒を見つめた。
なんだろ、これ。
外からの感触だと、単行本かな、と思った。
セロハンテープをはがして、そっと中をのぞいてみる。
そこには、紺色のきれいな包装紙で包まれた何かが入っていた。
はっとした。
これって。
ひょっとして。
プレゼントってこと?