『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
わたしは慌てて、セロハンテープを貼り直した。
はやる気持ちを抑えて、とにかく早足で家に帰った。
外の寒さなど、何も感じなかった。
頭の中が紺色でいっぱいになっていた。
玄関で靴を脱ぎ捨て、急いで階段を駆け上がり、自分の部屋の扉を閉めた。
肩で息をしながら、大きく深呼吸をする。
落ち着け、わたし。
さっき受け取った茶封筒から、ゆっくりとその中身を取り出した。
紺色の包装紙には、水色の小さなリボンがついていた。
無口な楢崎くんと、この小さなかわいらしいリボンが、不釣合いだと思った。
丁寧にセロハンテープをはがしていく。
中に入っていたのは、水色の表紙の上品なダイアリーだった。
「かわいい」
思わず笑みがこぼれた。