『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
表紙を開いてみる。
それは4月始まりの手帳だった。
ページをぱらぱらとめくっていると。
あれ?
明らかに手書きで何かが書かれているページがあった。
わたしはゆっくりとページを戻る。
「あった」
それは、2月の月間スケジュールのページだった。
そこに書かれている文字を見て、わたしははっとした。
2月28日の隣りに、2月29日が手書きで書き加えられていた。
そしてその欄に、
『誕生日おめでとう』
と、少し癖のある字で書かれていた。
この字は確かに、楢崎くんの字だった。
わたしの胸は一気に熱くなった。
頭の先から足の先まで、体が赤くなっている気がした。
嬉しくて嬉しくて嬉しくて、たった一言のその文字を、何度も何度も読み返した。