『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
昼を過ぎると、朝は遠くにあった鉛色の雲がみるみるうちに空を被ってしまった。
今にも雨が降りそうだ。
いや、黒に近いこの色は雪になるかもしれない。
少しわくわくした。
でもすぐに、ため息が出た。
傘、持ってきてないじゃない。
家に帰る時間まで、もってくれないかなぁ。
そんな願いもむなしく、無常にも降り出してしまった。
しかも、みぞれだ。
みぞれは一番厄介だ。
ほとんど雨と変わりないけれど、とにかく冷たい。
寒さをあおられる。
ふんわりとした雪ならわくわくするのに、一歩手前のみぞれだと、わたしのテンションは一気に下がる。
どうやって帰ろう。
この中を走って帰れば、ずぶ濡れになって大変なことになってしまう。
もう一度、窓ガラス越しに空を仰ぐ。
空一面黒い雲が被い、しばらく待っても止む気配がない。
思わずため息が漏れた。