『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
購買でビニール傘を買おうかな。
そんなことを思案していたら、突然目の前に折りたたみ傘を差し出された。
ふと視線を上げると、楢崎くんだった。
「へ?」
まぬけな声を出してしまった。
「ん」
半ば無理矢理わたしに傘を手渡すと、彼は教室を出て行ってしまった。
「ちょっ……」
わたしは折りたたみ傘を握りしめ、慌てて彼を追いかけた。
さっそうと歩いて行く彼を追いかけるのに、わたしは小走りになった。
楢崎くん!と声をかけようとして、思わずその言葉を飲み込んだ。
彼が女の子と立ち話をしていたからだ。