『短編』黒縁眼鏡のダイアリー
さらさらなロングヘアのかわいい子。
思わず視線を落とした。
その時、その女の子が履いているサンダルが緑色であることに気がついた。
あの人、3年生なんだ。
わたしがその場に立ち尽くしている間に、2人は話ながらどこかへ行ってしまった。
なんだ。
楢崎くん、彼女いたんだ。
しかも年上の。
……あれ。
なんだろ。
なんで、わたし、がっかりしてるんだろ。
わたし、楢崎くんのこと、そんなに好きだったっけ?
いいな、とは思ってたけど、こんなにがっかりするほど、思ってたっけ?
自分の気持ちに戸惑ってしまった。
彼から借りたタータンチェックの傘を広げた。
この上品でかわいらしい模様が、なんだかよけいにわたしをむなしくした。
彼が貸してくれた傘が、わたしをみぞれから守ってくれる。
だけど、とても寒かった。
そして、冷たかった。