恋愛トライアングル
その声を聞き流せるなら、聞き流したい。
なのにその声の主は、マシンガンのように口から言葉を発していた。
「えっ、ウソ。今日宿題あったの!?」
「ウソでしょ、やってないし」
「ってか、ゴムが見当たらない――あったぁ! 床に落ちてるじゃん」
「あ、やっぱり宿題なかった」
「高校生の朝って急がしー」
絶えず口を開いていないと気がすまないのが、私の妹だ。
毎日の朝のこういう状況のときは、何もかまわないのが一番。
「アキーっ! 結べない、結んでーっ!」
母親譲りのまん丸くりっくりの目を潤わせながら、私のほうを向くアリ。
もうっ!