欲張り
金がある頃はすべてがうまくいっていた。
欲しいブランドのスーツや靴、何だって買えたし、女が欲しがる高価な物だって買うことができた。
会社でも順当に出世して、それなりの地位を得ることができた。俺は、普通でよかった。
普通に結婚して、子供に恵まれ、マイホームを建てることが出来ればよかった。
それが崩れ始めたのは、人材派遣の事業を起こしたと何年か前に風の噂で聞いた高校時代の同級生の男から電話がきたときだ。
特別、親しくしていたわけではなかった。声を聞いたのだって、二十年以上昔のことだった。
「飲食店の経営をしようと思ってる。そこで君も一緒にやらないか。うまくいけば、何店舗、何十店舗と広げられる。君はまだ独身だってね。四十三歳にもなるのに、寂しいじゃないか。経営者になって上にいけば、女にも困らないよ」
独身で寂しいじゃないかと言われたのには、余計なお世話だと思ったが、経営者という言葉に胸が躍った。
欲しいブランドのスーツや靴、何だって買えたし、女が欲しがる高価な物だって買うことができた。
会社でも順当に出世して、それなりの地位を得ることができた。俺は、普通でよかった。
普通に結婚して、子供に恵まれ、マイホームを建てることが出来ればよかった。
それが崩れ始めたのは、人材派遣の事業を起こしたと何年か前に風の噂で聞いた高校時代の同級生の男から電話がきたときだ。
特別、親しくしていたわけではなかった。声を聞いたのだって、二十年以上昔のことだった。
「飲食店の経営をしようと思ってる。そこで君も一緒にやらないか。うまくいけば、何店舗、何十店舗と広げられる。君はまだ独身だってね。四十三歳にもなるのに、寂しいじゃないか。経営者になって上にいけば、女にも困らないよ」
独身で寂しいじゃないかと言われたのには、余計なお世話だと思ったが、経営者という言葉に胸が躍った。